神社の作法

参拝の作法

正中線とは?

普段の参拝も正式参拝も基本は同じです。神社の入口に立ったら、鳥居のまえで一礼し、参道の中心から拝殿奥まで仮想の線を心の中にひきます。これを正中線(せいちゅうせん)といいます。専門的な神社用語の正中線とは必ずしも一致しないと思われますが、お許しください。

正中(せいちゅう)とは神社、解剖学、機械工学、天文学でよく使われる用語です。正中線とは上下表裏のある(比較的)左右対称の物体の表の真ん中に上から下に引いた線とここでは解釈してください。

この線に近ければ近いほど上位の尊い場所です。正中線の真上では、本殿の奥の御神座が最上位です。そこに向かって正中線の右直近が次の上位です。次は左直近といった順で外に行くほど遠くにいくほど下位になっていきます。

正中線とは

神社の歩き方?

神社の歩き方

前川神社では本殿奥に坐す神様を常に心の中に、そして神様から延びる真正面の線を注意します。この線を正中線といいます。正中線は尊い場所なのでできるだけここを歩くことはいたしません。神様の行く手をふさぎ、視線をさえぎることになるからです。

基本は神様に向かって進むときは、正中線の尊い場所から遠いほうの足(下位の足)から進み、退くときも正中線の尊い場所に遠い足(下位の足)から退きます。


参道が狭い等の理由で仕方なく正中線上を本殿に向かって進むときは同じように下位の左足から進みますが、正中で拝礼を終えて退くときだけは上位の右足から行動します(足をひく)。正中は、本当はひとがいてはいけない尊い場所なので、仕方なく正中線直近に足がある場合、自然に「早く退けなくちゃ…」いう心理が働いて上位の側にある右足を半歩引き、回れ右をして、振り返ったことで上位になった左足(神前とは逆を向いているので最上位に向かって右は左足です)からさがっていくことになります。

正中を横切る際には頭を下げながら正中を通過します。


手水舎でも足の作法はおなじです。階段があるときは、階段の下で足を揃え浅く一礼し、尊い場所から遠いほうの足から階段をのぼります。降りるときも尊い方に遠い側から足を進めます。

階段の正中を降りなければならないときは左足からです。(逆を向いているので最上位に向かって右は左足です)階段を降りきったら回れ右で振り返って一礼します。(浅い礼)


拝礼の作法とは?

手水を終えたら 、お賽銭を入れ、鈴を振り、神前の拝礼は2礼2拍手1礼です。(礼はふかく最敬礼) 

玉串奉奠の作法

玉串奉奠(たまぐしほうてん)の流れは?

(1)玉串後取の前で浅く礼をし、差し出す玉串を右手(手のひらは下向き、親指を使い下から根本側をつまむ)と左手(手のひらは上向き、中程を支える)で受け取ります。胸の高さで玉串を少し斜め(根本より枝先が少し上)にし、息がかからないように少し体と離します。

(2)玉串案の前で足を揃え、添えていた左手を右手の位置まですべりおろしながら玉串を立てます(自分から見て玉串は時計回りをはじめます)。左手親指を使い根本を支えます。玉串を正面にみて祈念をこめます。

(3)右手を離すと同時に左手手首を返し根本を神前に向けます。

(4)右手を添えて玉串案におきます。

(5)2礼2拍手1礼します。

(6)2礼2拍手1礼を終えたら、元いた位置に戻り着席します。

おそなえの仕方

おそなえの仕方は?

神様のおそなえ物を神饌(しんせん)といいます。普通、神饌は三宝に載せておそなえします。おそなえ物をおそなえすることは献饌(けんせん)、おそなえ物を下げることを撤饌(てっせん)といいます。

神社の神様でもご家庭の神棚でもおそなえの考え方はおなじです。ここでもまた正中線を心に引いて最も尊い場所、その次に尊い場所…等を仮想してください。最も尊い場所に最も尊いものを置くことになります。神社の場合では、最も尊いものはお米になります。次に尊いものはお米の加工品で加工が進むほど順位はさがります。例えば赤飯は餅より、餅は酒より上位です。

場所にも神饌物にも上位、下位の順位があり、それを順位どおりに献饌してゆけばよいのです。

おそなえの仕方

(御供えの要点を説明されている資料がないのでここでしてみようと思います。ここで説明することは神社でのおそなえの規範や史実をもとに、私の経験を踏まえ前川神社でのお供えの考え方をまとめようとしたもので必ずしも一般的な考えと食い違うかもしれませんがお許しください。)訂正箇所あれば、「お問合せフォーム」にてご指摘ください。


基本の考え方は、お供えものの順位をお供え位置の順位に合わせることです。

まずお供えするものには順位があります。


お供え物(神饌)の順位

説明を簡単にするためここでは便宜的にお供えものに10段階の順位をつけることをお許しください。

一番順位がたかいのは、お米

二番目は米の加工品(炊米、おこわ赤飯、稲荷ずし、餅、酒など)

三番目は穀類(大豆、小豆、あわ、ひえ、麻の実など)

四番目は魚貝や鳥獣その卵(鯛、イカ、山鳥、水鳥、家禽、鶏卵など)

五番目は野菜(里のもの:葉菜、根菜、花野菜、実野菜、芽など)

六番目は果物類(山のもの:木になる果実、ツルになる果実、など)

七番目は乾物類(ふ、しみ豆腐など)

八番目は菓子類(らくがん、砂糖菓子など)

九番目は調味料(塩)

十番目は水

の順です。


これらを『お三宝』に半紙をひいてからお供えしますが、順位の違うものを同じ三宝にお供えすることは可能な限り避けます。ついでに申しあげますと三宝には表裏がありますのでお気をつけください。ここでは半紙を敷く部分を三宝の折敷(おしき)部分と称すことにします。この折敷部分に樺(かば:桜の皮)の接ぎ目がある面が三宝の裏側で、その反対側が表です。神様には表をむけます。三宝の台座部分にも樺の継ぎ目があり、ほかの面に開いている象眼(がんしょう)とよばれる穴がありません。こちら側が表になります。

三宝の表

三宝の裏

三宝の斜め左表

三宝の斜め左裏

順位のすべてをお供えできることは、村のお宮のお祭りでは、ほぼありません。理由として季節によっては特定のお供えものを入手することが難しい場合もありますし、調達する時間その他に限りがあるからです。

とくに村のお宮ではお供えするスペースも狭いこともあります。使える三宝の台数にも限りがあります。ご家庭の神棚にいたってはもっと切実だとおもいます。ご家庭の神棚ではスペースの関係で普段は米、酒、塩、(水)のみをおそなえすることになります。


水は様々な理由で省略される場合もあります。現在、神饌として水を御供えする場合、通称『みずたま(丸い水器で先が尖る蓋がある』と呼ばれる器が使われることが多いのですが、この『みずたま』は仏壇からの流用品で昭和中期くらいから家庭の神棚でも使われだし神社がそれに追従して使いはじめたと聞きます。つまり、そのむかし純粋の神道の家庭や神社にはこの『みずたま』の備えがなかったのです。ですので水は別の水器または皿に盛られ三宝に載せておそなえされるかまたは省略されていました。また現在都市部の水道の水には人には無害でも淡水魚が死んでしまうほどの濃度で塩素が添加されていることも省略する理由のひとつです。少しでも説明を省く意味でもここでは水をお供えものから省きます。


神棚では、米と塩は『かわらけ(白無地で大きさが醤油皿くらいの陶器の小皿)』に別々に盛っておそなえすることがおおいです。塩と米の器は、同じ色で同じ大きさのお皿なのでとなりどうし左右一対の置き方にすると見栄えのバランスがよいのですが、御供えの理想的な姿からみると米と塩の間には便宜上省略した、たくさんのものがあることを留意しておかなければなりません。


実際一台の三宝に米、塩、酒を混載して御供えすることが多いのですが、その場合、1台の三宝のお供えを載せるスペースをさらに三分割して正中一番奥に米、中ほどにお神酒徳利(瓶子:へいし)を一対、一番手前に塩(と水)となりますが、三宝のサイズによっては、おそなえスペースを二分割しかできないこともあり、その場合しかたなく米、お神酒徳利1を奥の列に、お神酒徳利2と塩を手前の列にするかもしくは一対のお神酒徳利を奥横一列に 米と塩は並べてその手前一列にします。

場合によって順位の高い米が奥ではなく手前になってしまうのにも理由があります。ふつうの人が近づけない神社の神前や天井にちかい家庭の神棚で米がお神酒徳利(瓶子:へいし)の蔭(かげ)になることでなにかのはずみで塵や埃がついても、虫や鼠が米を食べていても気がつかなくなってしまうことが主な理由です。


お問い合わせが多いのですが、お聞きするうち、お神酒徳利と一緒に米と塩を並列して1台の三宝に混載する場合に特に誤解が生じているようです。一般的に右に米、左に塩といわれますが、それは三宝1台だけもしくは奇数台の三宝を正中線上にお供えする場合に限られます。


三宝が複数台になると正中線をはさんで右の三宝と左の三宝と分かれます。

1台の三宝にお米とお酒とお塩(お水を省略した場合)が一緒にお供えされていますからお米はその三宝の一番奥(お神酒徳利の奥)か正中線寄りの手前左側、塩は正中線に遠い手前右側となるのがせめてもの理にかなった置き方となります。

水器を使わない三宝1台の混載例

正中線は三宝の真ん中を通る。三宝上には米が右、塩が左にある。


水器を使わない三宝2台の例

正中線は2台の混載三宝の間を通る。右側の三宝上では米が左、塩は右にある。左側の三宝は魚、野菜果物を混載。三宝が2台しかない時に限りしかたなく混載。 

写真で米の位置に注目してください。

正中線上に1台だけの左の写真の三宝上では、確かに米は右、塩は左側です。しかし右側の写真では三宝が2台になり、米が載った右側の三宝上だけみると米が左、塩が右となります。2台の三宝の真ん中を通る正中線に近いほうが上位の置き位置だからです。

ちなみに左側の三宝ではするめを魚の代用としていますので正中寄りの一番奥がその三宝の上位の置き位置です。そこで奥の右側に野菜、手前に果物となります。 

お供えが三宝三台の例

以下の写真は三宝の台数が増えた場合の例です。写真のお供えものの順位とおそなえ位置の順位を合わせてお供えいたします。

奇数台では米は右、塩は左。野菜果物を混載した三宝上では奥に野菜、手前に果物(三宝が3台しかない時にやむなく)

魚の三宝に貝、野菜が手に入らず、しかたなく省略

おそなえが三宝四台の例

三宝の総数が偶数台では最上位の置き位置の三宝上では米が左、塩が右

三宝の総数が偶数台では最上位の置き位置の三宝上では米が左、塩が右

お供えが三宝5台の例

果物を2台に分けた場合、三宝総数は5台の奇数台なので真ん中の三宝では米は右、塩は左

茅の輪のくぐり方

茅の輪のくぐり方は?

(1) 茅の輪の前に立ち軽く礼をし、『下位の足』からまたいで輪をくぐり左まわりに廻って元の位置にもどります。 

下位の足とは正中線上または正中線の左寄りでは左足です。 


(2)茅の輪の前で軽く礼をし、『下位の足』からまたいで輪をくぐり、右まわりに廻って元の位置にもどります。 

下位の足とは正中線上では左足、正中線の右寄りでは右足です。


(3) 茅の輪の前で軽く礼をし、『下位の足』からまたいで輪をくぐり、左まわりに廻って元の位置にもどります。 

下位の足とは、正中線上および正中線の左寄りでは、左足です。


(4) 茅の輪の前で軽く礼をし、『下位の足』からまたいで輪くぐり、ご神前まで進んで、 2礼2拍手1礼の作法でお詣りします。

下位の足とは、正中線上または正中線の左寄りでは左足、正中線の右寄りでは右足です。 


茅の輪のくぐり方
前川神社

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